2026-06
2026地主会への道・26
2026地主会への道・26
ある日のレッスンで彼女から質問を受けた。
「自分の解釈で歌っていいんですか?」
私の頭は一回「?」となった。
自分の解釈ではなく一体、誰の解釈で彼女は歌おうとしているのだろう、と疑問に思ったので、彼女に質問してみた。
「誰の解釈で歌おうとしてたの?」
彼女は「原曲を歌っている歌手の解釈です!」と即答してくれた。
私は右斜45度の空中を見つめながらとても驚いた。
私は考え事をする時は右斜45度を眺めるクセがある。
そのような考え方があるのか。
彼女が今回、地主会で歌う曲は彼女が大好きなアーティストの曲である。
曲中に登場する場所の地名などについて彼女は詳しい。
彼女の歌を聞いていて、どこか他人事のように私には聞こえた。
自分事として、一度歌ってみたらどうだろう、と彼女に提案してみた。
歌も絵画も詩も本も、どのように解釈してもよいと私は思っている。
見る人によって感じ方や、解釈は自由だと思う。
それがアートの素晴らしい一面だ。
心が自由になれる。誰の干渉も受けずにその世界へ入っていける。
「このように解釈してください。」という注釈の張り紙が絵画展や音楽ライブの会場にしてあったら人はどう思うのだろうか。
私は、
「ご丁寧にありがとうございます。しかし解釈は私の方で行いますので、お気持ちだけいただきます。」と付箋に書いて、その張り紙の横に貼るだろう。
彼女はきっと大好きなアーティストの書いた歌詞の世界を読んで、歌い、そのアーティストの解釈がどういうものなのか、たくさん思いを巡らせてくれたのだろう。
そのプロセス自体、とても大切な行為だと思う。
私もある程度は原曲を歌うアーティストの解釈などを想像するが、
彼女ほど丁寧にそのプロセスを踏んでこなかった。
自分が考えもつかないことを他者は考える。当たり前なのだが、
なぜそのような思考に至るのかを確認していくと、また新しい視点を他者から受け取ることができる。
地主会を前に彼女から大切なモノを受け取った。
私は彼女の歌を聞きたい。
彼女の歌が聞きたい。

大場佳恵
2026地主会への道・25
2026地主会への道・25
「今回の人生ではこの曲のイントロは無理やね」
ある日のギターレッスンで地主先生からの回答だ。
イーグルスというバンドのホテル・カリフォルニアという名曲がある。
この曲のイントロとギターソロが私は学生の頃からなぜか大好きだ。
「今回の私の人生の間にホテルカリフォルニアのイントロとギターソロ弾けるようにならんかね?」
と質問をしたのだ。
「うん、今のペースやったら今回の人生では弾けんね」
即答であった。
「彼なら弾けるかもしれんね?!」と私は続けて質問をした。
「うーん、頑張ったらいけるかも」
羨ましい。彼は今回の人生に希望が持てるじゃないか。
私は来世があれば来世に期待しよう。
彼は若い頃にギターを弾いていた。ステキなことだと思った。
人生の後半戦に入ってきて、地主先生の元へギターを習いに来てくれた。
彼は一本ずつの弦を丁寧に爪弾く。
私とは真逆の弾き方だ。
彼がギターを弾いているところを盗み見る。
背後から覗き込む私の気配に気づき、
「おぅ!」と彼は驚く。
「この音どうやって弾いてる?」
とギターの先輩である彼に聞く。
わからないことは、わかる人に聞けば良いと私は思っている。
地主先生はちょっと違う。
「一回自分で色々やってみればいい」
なるほど。
問題解決能力が高い人は、とりあえず、やってみるという策を取るのか。
たしかに。弦希先生はわからないことがあれば、すぐに調べている。
私は一旦、わからないことを放置してバナナを食べる。
そのうち、わからないことが何だったかを忘れてしまう。
彼と地主先生と弦希先生と私という組み合わせで会える機会は中々ない。
だからこそ、この時を大事にしたい。
彼はもう一つ、重要なアイテムを持っている。
特徴的な声だ。私は彼のような声になぜか惹かれる。
いろんな情報が含まれていて、とても神秘的な声に私には聞こえるのだ。
彼の声の中に入っているものを見たくなり、つい彼の声ばかりを見てしまう。中身を一つずつ取り出し、みくらリビングの床に並べて、
弦希先生と共にバナナを食べながら検証したい。
今年は彼のギターの音も聞いてみよう。

大場佳恵
2026地主会への道・24
2026地主会への道・24
本日は私の夢分析の日。
ラクジーとカモミールティーを飲みながら、よもやま話や、打ち合わせをしながら始める。
そういえば、今回はおもしろい夢を見たなぁと自分が先月に見た夢を思い出した。
ラクジーは夢の原稿を何度も繰り返し読み込んでは、調べる。
おしっこをしてからまた読み込んでは、メモを書き込む。
煙草を吸ってからまた読み込んでは、調べる。
今回の夢は私にとって通過儀礼となった。
夢を読み解く仕事は生半可な知識と忍耐力と精神力では行えない。
夢見者も夢特有の言語を少しずつ理解していく必要がある。
本を読むために漢字を覚えるということに似ている。
お互いに根気のいることなのだ。夢見者が見たくない現実や、
思いもしなかったこと、蓋をしてきた感情、忘れていた記憶、
会ったこともない人物の登場など。
夢の世界は現実世界とはまた異なる種類の広大なスケールと、ストーリーが待っている。
彼はどんな夢を見ているのだろう。
彼には今年の地主会で歌ってほしい曲をリクエストしていた。
みくら音楽工房の玄関先で彼に会い、私のリクエスト曲のテーマであろう「不惜身命」について説明した。
彼に歌って欲しいと思っていたが、今回は違う曲を選んだ。
若い世代の彼が、おしゃれで渋い大人の曲を選んでくれた。
面白い選曲だと思った。
昨年の地主会よりも私も彼もラクジーも一つ年を取った。
今回の彼の歌はどんな方向へと向かうのか。
私たちをどんな世界に連れて行ってくれるのか。
写真は本日の私の夢分析の原稿の一部。
夢は解くことはできるが、ラクジーは自分で書いたメモが解読できなくて困っている。字が汚いのだ。
たぶん、原稿に水をこぼした。
それだけ私の夢を読み込んでくれたのだ。
通過儀礼の夢となったので記念に写真を撮った。
夢の分析内容にあまりに驚いたので、ラクジーにありがとうを伝えるのを忘れてしまった。
本日をもって私は新たな方向へと進む。
彼と共に地主会へと向かっている。

大場佳恵
2026地主会への道・23
2026地主会への道・23
同行二人(どうぎょうににん)という言葉がある。
昔、ラクジーから教えてもらった言葉だ。
改めてスマホで調べてみると、
「四国お遍路の際に使われる言葉で、巡礼者が一人で歩いていても、常に弘法大師(空海)が傍らに寄り添い、共に旅をしているという意味を持つ信仰の言葉です」とのことだった。
空海さん。
まずい。
ここに来て、空海さんが私の生活圏内に入ってきてしまった。
私の好きな芸人で作家の又吉直樹さんも空海さんが好きだということを最近知った。
私がレッスンを担当している20歳以上年下の生徒さんからも、
「空海」という単語が出てきた。
彼女が推し活をしている女性アイドルの人も、空海さんが好きだと公言しているとのことだった。
空海さんが私の生活に頻発してきている。
空海さんが以前からずっと気になっていて、地主会が終わったら色々調べてみようと思っていた。
彼女が今回の地主会で歌う曲に「あなた」という歌詞がよく出てくる。
曲の中ではよく使われる単語だと思うが、この「あなた」を誰に設定するかで曲の内容と表現は大きく変わるし、個性が出る。
レッスンで、この【あなた】は誰にするか、彼女と相談した。
現時点で一旦決定したが、もしかしたら、今後のレッスンや、地主会のリハーサルを経て設定を変えるかもしれない。
色々試してみたら良いと思う。
彼女が【あなた】を誰に設定したか、地主会当日に彼女の歌を聞きながら想像してみてもらいたい。

大場佳恵
2026地主会への道・22
2026地主会への道・22
今年の地主会で彼女は新しいことに挑戦する。
以前からレッスンで、
こうしたらいいかなぁー。
ああしたらいいかなぁー。
と彼女に関して色々イメージしていた。
私はお風呂に浸かっている時、寝る間際、起床時にアイディアが浮かんでくることが多い。
中々、厄介な時間帯である。
忘れるともったいないので、ブツブツとアイディアを音読しながら廊下を歩いて、メモをする。
忘れかけていた夢を思い出す時もこの時間帯になることが多い。
ある日のレッスンで彼女にアイディアを伝えた。
「どうしようか、ちょうど迷ってて」
後日、彼女から「やってみます!」というメールが入った。
動いた。
やった。
これで彼女の身体も、歌もいろんな意味で動き始める。
私の中で「光」が一つのテーマとなった。今回の私のアイディアを手伝ってくれる仲間に連絡を入れる。
なるほど!貴重な情報をありがとうございます。と仲間は返信をくれた。
歌において光の量を調節する表現は中々難しい。
響かせる身体の部位を変えなければいけないし、いきなり変えすぎると違和感しか残らない。調光具合も表現したいので、どのタイミングでどのぐらいの明度にするのか、歌う彼女本人とも打ち合わせをする。
アイディアと彼女の決断と、仲間と、地主先生のギターという組み合わせでどのような世界が6月に広がるのだろう。

大場佳恵
2026地主会への道・21
2026地主会への道・21
「お父さん、中島みゆきさんの糸っていう曲、知ってる?」
「おう、知っとるよ。ラジオでよくかかっとるわ」
ある日の私と父の会話である。
表具師である父は、今年いっぱいで仕事を引退するらしい。
表具師とは掛軸をつくる職人である。
昨年、父が入院した際にお世話になった医療関係者の女性が、
無類の美術マニアで、父の退院後に私の実家に遊びに来てくれるようになった。
父とその女性と母は仲良しになり、父が掛軸レッスンを行うことになった。
私も仲間に入れてもらうことになった。
期間限定のなんちゃって弟子の誕生である。
表具で使う生地は美しい。金が織り込まれているなんとも贅沢な生地もある。日本古来の模様も美しすぎる。
私の掛軸レッスン初日。
「縦糸と横糸があるやろ?その目を揃えるんや。はみ出してる糸は抜けば良い」
と父は言う。
「これ、一本ずつ糸を抜いていったら全部抜けてしまって、生地無くなるね?」
「あんたねー・・・。キリの良いところってあるやろ。そんな強く引っ張ったらダメや!」
と師匠に怒られる。
「なるほど。そーっと取り扱わなきゃダメなんやね。ギター科の地主先生にも強く弾きすぎやって言われるし、
アロマ科の奈保美先生にも佳恵ちゃんのマッサージは強めやねって言われるんやわ」
と、各ジャンルについて何でも力が強すぎることを反省する弟子。
「そりゃ、だめやわ!」
とギターもマッサージも掛軸でも父にダメだしされる。
裏打ちの第一段階の作業が終わって、彼が今年の地主会で歌う曲を考えながらその生地を眺める。
一本一本の縦と横の糸を職人さんが織って、その生地を裁断して幾重にも裏打ちなどの工程を繰り返し、掛軸本体に耐久性を持たせる。
手間暇をかけたものには力が宿る。
彼は私と違って、とても丁寧にモノも歌も取り扱う。
彼が掛軸を作ったら、おそらく私より仕事がキレイで父に褒められるだろう。
掛軸と歌が無くても人間はきっと生きていけるのだろう。
しかし私は、掛軸と歌がある世界で生きていたいと思う。
彼もきっと、そう思ってくれる人だと思う。
掛軸が完成したら、彼に見てもらおう。

大場佳恵
2026地主会への道・20
2026地主会への道・20
「赤い電子ピアノを弾く人は、ものすごく上手なピアニストっていうイメージねんけど・・・」
「じゃあ黒買えばいいやん」
何年か前に小型の電子ピアノを購入する際の地主先生との会話。
その時の打ち合わせでは黒にするか、赤にするか決めきれず保留となった。
後日、ラクジーの夢分析の際に、
黒か赤の電子ピアノ、どっちがいいか迷っていて、先の地主先生との会話内容をラクジーに話すと
「ほんなら、黒買えばいいがいね。
いや、待て。あんた黒買った後に、
やっぱり赤の方が良かったってなったら、地主とワシのせいにするわ。ダメや。自分で決めろ」
私の買い物における思考経路はラクジーにはお見通しである。
大きな決断というのは中々、難しい。
後悔したくないし、損はしたくないし。
自分だけではなく、家族、グループ、会社、社会、国家など規模が大きくなり自分の決断が多くの人を左右するのであれば、その決断の重さは、電子ピアノどころでは済まない。
赤い電子ピアノを見ていて、彼女の歌を思い出した。
「赤」が出てくる歌だ。歌の歌詞で色が頻繁に現れるのは、その色が持つイメージを比喩として借りているのではないだろうか。
長編小説などであれば、長くフレーズを書いてもよいのだろうが、
歌の歌詞となると、メロディーとリズムとの一体感もある程度考慮しなければいけないので、言葉の数や種類はより吟味される。
その制限された枠組みの中で、「色」というアイテムはとても有効な表現手段だと思う。
彼女が今回、地主会で歌う曲には「赤」が入っている。
昨年、彼女が地主会で歌った曲にも「赤に纏わる複数の色」が歌詞に入っていた。
今回、彼女が歌う赤は、とても強い赤なので、その赤が強すぎず、弱すぎず、身体にも負担をあまりかけない歌のキーを設定した。
どのような赤を歌いたいのかイメージしてみると、呼気圧が決まりやすく、歌うべき音を決断できる。
彼女も毎日、決断の連続で忙しい。
私は赤い電子ピアノの購入を決断してよかった。
私と彼女の決断を後押ししてくれる。

大場佳恵
2026地主会への道・19
2026地主会への道・19
ひょんなことから7という数字が彼女にくっついてきた。
彼女は今回の地主会で、2023年みくらライブというイベントで歌った曲を再度、歌うことになった。
バンドアレンジではなく、地主会アレンジで歌う。
【7という数は太古から人類を魅了してきた。~中略~
音楽では音階を7音あげると1オクターブ上の最初の音になること。
~中略~
中国でも、7は特に女性の人生に関連づけられる。少女は7か月で乳歯が生え、7歳で乳歯が抜け、2×7=14歳で「陰の道」が開いて性的成熟に達し、7×7=49歳で更年期を迎える。これは医学的見地からすると極めて妥当であり、更に付け加えれば、月経が7×4=28日ごとに定期的に訪れる。】
数は何を語るのか
F・C・エントレス // A・ シンメル 共著
橋本和彦 訳
P134~136 引用
彼女は今、人生の大転換期を迎えている。
そのことを知っているみくら音楽工房の人々は、みな驚く。
「大丈夫なん?彼女。地主会出れるん???」
彼女は地主会後に遠くに旅立つ。
おそらく彼女のこれまでの人生の中で、今、一番忙しくしているのではないだろうか。
彼女と私に纏わる事を書くと涙でパソコンの画面が見えなくなるので書かない。
彼女と共に、いくつもの困難を乗り越えてきた。
乗り越えてきたつもりだ。まだ、残りカスのようなものはあるが、
それはこれからのお互いの人生で、消化していくことになるのだろう。
彼女の門出を祝いたい。
きっと、彼女は自分の人生をその小さな身体と、力強い声で切り開いていくだろう。
彼女が帰ってくる場所を残しておいてあげたい。
だから私は今日もみくら音楽工房で働く。

大場佳恵
2026地主会への道・18
2026地主会への道・18
簡単な言葉で難しい内容を伝えることは大変だ。
難しい内容は難しいからこそ、それを説明する時は難しい言葉を使用する頻度が高くなる。
今年の地主会で彼女が歌う曲は、深い内容が簡単な言葉とシンプルなメロディーで作られた名曲である。
彼女の持つ美しい高音の声は地主先生のギターの音と重なるとどのようなハーモニーになるのだろうか。
想像してみるのだが、全く浮かんでこない。
一体、この曲はギターだけでどのようにアレンジするのだろう?
と、十年間地主会のたびに考えてきた。
地主先生のアレンジ能力は非常に高いと思っている。
私はボイストレーナーなので、音楽においてメロディーに関することが役割の中心となる。そのためハーモニーに関して弱い。
「ピアノ弾いとるやろうが」と地主先生に言われるが、弾くことに手一杯でハーモニーのことや曲全体の構成を考えるまで至らない。
私が地主先生のギターレッスンを習い始めた理由の一つがここにある。
地主先生はギターレッスンで、私になぞなぞを出題してくる。
「はい、正解。そのベースラインで構成を覚えればいい」
なるほど。
後日。私は地主先生に授けてもらった智恵を自分のボーカルレッスンに持ち帰る。
「この前、地主先生のギターレッスンで教えてもらってんけどね」
と生徒さんに伝える。
後日。
「この前、アロマ科の奈保美先生に打ち合わせの時に教えてもらってんけどね」
と生徒さんに伝える。
後日。
「この前、弦希先生に打ち合わせの時に教えてもらってんけどね」
と生徒さんに伝える。
後日。
「この前、ラクジーに夢分析の時に教えてもらってんけどね」
と生徒さんに伝える。
後日。
「この前、衣装講師の青山先生に打ち合わせの時に教えてもらってんけどね」
と生徒さんに伝える。
一人の生徒さんを、全講師の視点で見させてもらう。
私の言葉では納得や理解ができないことでも、地主先生や奈保美先生、ラクジー、弦希先生、青山先生の言葉なら伝わる場合がある。
私一人が伝えても、伝えきれないのであれば全講師の力を借りよう。
数の力だ。
多ければ良いというわけではないのだろうが、同じ志の者が多ければ心強い。
大河ドラマの見すぎだろうか。
ある日の夕方、彼女とみくら音楽工房の駐車場で会った。
「こ、この車は?!」挨拶するより先に出た言葉だ。
「外装と内装を見てもいいですか?」と彼女に了解を得て見させてもらった。
私が何年も前から乗りたいと思っていた車だった。
美しい高音域の声を持つ女性は、力強い車が好きなのだろうか。
私は美しい高音域の声を持ち合わせていないので該当しない。
予測不可能なアレンジと歌で構成される地主会。
彼女が再び出演してくれることを聞いて私は台所で
「わぁー!!!」と中音域の地声の大声を出して喜んだ。
高音域の声についてと、なぜあの曲と車を選んだのか彼女と話してみたい。

大場佳恵
