大場佳恵のブログ, 講師ブログ

ピッチの正体

IMG_0706朝晩の気温から秋を感じます。

エアコンの温度設定も少しずつ変わってきました。

歌うと暑いので、レッスン室は相変わらずの温度設定です。

 

今日は「ピッチ」について書いてみようと思います。

最近のブログでも少し触れましたが、ピッチとは音程のことです。

ボーカル科の生徒さんがレッスンをはじめる時の希望は

「音程をきれいに合わせられるようになりたい」

「高音域を出せるようになりたい」

というこの2つが圧倒的に多いと思います。

 

当たりまえだと思われますが、この2つの呪縛に苦しんでいる方は

とても多いのです。

レッスンを進めていくうちに、レッスンではうまくピッチが取れるようになったのですが、

ライブになるとどうしてもズレてしまう、ということがあります。

ボイストレーニングをするとピッチはかなり矯正されます。

しかし、ピッチというものは発声・発音器官だけをトレーニングして直るものでは

ないのです。

 

何度かこのブログにも書いているように、ボーカルとは身体が楽器という特種な

パートです。

ということは、心も楽器の一部になります。

発表会やライブで歌うことはとても緊張します。誰だって緊張します。

するといつもより身体も心も硬くなり呼気圧が変化します。

このことが、レッスンではピッチが良いのにライブで悪くなるという状況を

生み出します。

 

どうしたら良いのでしょうか。

ライブの数を増やして慣れることが良いのでしょうか?

それもひとつのやり方だと思います。

私はそんなときには、

「別にいいよー。多少ずれても!」と生徒さんに声をかけてみます。

 

一流の表現者はピッチが全くずれていないのでしょうか。

ずれている方はたくさんいらっしゃいます。

全くずれていないことを求めるのであれば、機械にお任せすれば

良いと思います。

しかし、「歌」というものは人間が歌うのです。

そこに、多少のズレがあるぐらいが魅力的だと私は思います。

ズレの許容範囲の幅は聞く人それぞれだと思います。

完璧な人間ってどんな人間なのでしょうか。

もし、存在するとしたらちょっと気味が悪いかもしれません。

 

逆にあまりにもピッチがずれているにも関わらず、それに気が付かないで

歌い続けるというのも、気味が悪いと思います。

ちゃんとピッチの練習をすることはたいせつです。

 

ピッチとは「バランス」だと思います。

緊張とのバランス、バンドとのバランス、お客さんとのバランス、

なにより自分自身とのバランス。

 

「音楽」という行為はバランスをとる行為だと感じることが多くあります。

人間は機械ではありません。

だからこそ、一見すれば世界になくても生きていけるような行為を

人間は求めるのではないでしょうか。

 

 

石川県金沢市にあるドラムとボーカルの音楽教室

みくら音楽工房・ボーカル科講師

大場佳恵

 

 

 

 

2015-08-26 | Posted in 大場佳恵のブログ, 講師ブログ